日本職業教育学会への名称変更

 本学会は、学術と職業とをつなぐ学びと教育の研究コミュニティです。1960年の日本産業教育学会創設から60年の歴史をもつ学会であり、2020年4月から日本職業教育学会に学会名称を変更しました。学会創設時から、私たちの学会では、社会のさまざまの産業のもとでいろいろな職業が展開し、そのための準備としての学校教育と現場での訓練が展開していることを踏まえ、また学校教育に関わる関係者と産業・職業の現場の専門家とが、その界をこえて学術交流を行うことを大切にして、産業教育という言葉を使ってきました。
今回の職業教育の用語を用いる名称変更は、職業が社会の分業と連帯の基本であり、これまでの産業教育の探究の成果を継承発展させていくとともに、これまで以上に、より広い範囲の教育界や産業・職業界の現場に関わる人たちが参画し、それぞれの界に関わる課題についての専門的な研究を深め、かつ多様な現場と領域からの研究交流を拡げていくためのものです。
本学会の研究領域と界の広がりは、UNESCOなどの提唱する国際的な教育理念の展開にも呼応しています。初等中等教育の段階での学びと教育に焦点をあててきた職業教育(vocational education)から中等教育後の第三段階教育に拡がる職業・技術教育(vocational and technical education)へ、さらに学校での間接的な職業への準備教育だけでなく産業・職業現場での直接的な職業訓練、リカレントな学びを含めた職業・技術教育と訓練(technical and vocational education and training)を統合的に把握することで、人々がキャリアのあらゆる段階で職業に関わる学びを深めていく生涯学習社会を視野に入れた、今日的な社会的課題としての「職業教育」の探究が可能になるのです。
学術と職業を往還する学びと教育をめぐる本学会員の研究は、初等中等教育から第三段階教育、職業能力開発にいたるさまざまの場における職業に向けた学びに関わる教育と訓練の方法や実践の研究とともに、その実態の把握にかかる事例研究・実証的研究、教育と職業の現実的付置にかかる教育社会制度・政策研究、それらを古今東西の国際的動向や歴史の中から探究する比較研究・歴史研究、そして、それらの思想と理論な研究にまで拡がります。
本学会は、これらの問題に現場で携わり、またその把握のための研究方法に魅力を感じている皆さまの研究コミュニティです。皆さまとともに、教育と社会への新たな⼒を生み出していきたいと思ってます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

日本職業教育学会初代会長  吉本 圭一
(滋慶医療科学大学院大学教授、九州大学名誉教授)

[投稿日 2020年7月26日 大安]