第2回 エルゴナジー研究会 (能開総合大分会) ●場所 職業能力開発総合大学校 研究棟 2階 会議室 ●日程 平成15年5月10日 13:00〜19:00 |
テーマと検討内容の紹介
今回の研究会では、セミナーの開設手続き、評価方法についての発表が2件ありました。
紹介 | 高度ポリテクセンターでのセミナー開設・実施・評価の試み | 村上智広 |
(1)テーマを取り上げる主旨 在職者向け能力開発セミナーの実施に関する機構指導員の業務は、@訓練ニーズの把握、Aセミナー企画業務、Aカリキュラムの編成B実習装置・課題、講義テキスト等の教材開発、C訓練の運営実施、D実施後の評価改善に至るまで多岐にわたっている。ある程度経験を積んだ機構指導員は、意識するしないに関わらず、これらの業務に係わっていることは、機構指導員には理解される所であろう。また、他の機関では、国内外を問わず多くの場合、訓練の企画編成と実施運営は分業化されている。 この様に考えると、在職者向け能力開発セミナーの実施に関する機構指導員の多機能的な業務遂行能力は、我々が認識している以上に機構指導員の強みとなるのではないかと考えている。 平成14年4月より、開発セミナー、及び既存セミナーの的確性向上を目的として、高度ポリテクセンターにおける能力開発セミナーの開発から実施までの過程を改めて検討し、「重要プロセス」、「勘どころ」をあきらかにし、検討結果の有効利用を図る取り組みを開始した。 (2)平成14年度検討内容の主な概要 @ 素材生産システム系で実施しているセミナー運営プロセスを分析し、主要項目を抽出した。 A これまで個別に行われていた実施結果検討を、素材生産システム系として組織的に行った。 (3)今後の取り組み予定 @セミナーコース開発プロセス(案)に沿って、実務を進めながら、「勘どころ」の抽出を図ると共に、セミナー開設の「的確性の向上」を目指す。 A有用性が認められる事項から順次センター全体の取り組みへ移す。 (4)参考となるHPのURLなど 高度ポリテクセンターホームページ http://www.apc.ehdo.go.jp/ センター概要に加えて、「延べ800コースの能力開発セミナー内容」を紹介しています。 (5)今回の研究会での討論の概要 ・TMC各段階が、次工程の妥当性を示す根拠となることから、それらの文書化を確実にする必要があることなどが示された。 |
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討論 | PPM手法を適用した研修効果評価手法構築 | 砂田栄光 |
発表内容 近年、行政サービスに対して厳しい目が向けられるようになった。 公共職業能力開発施設が行う各種の教育訓練に対しても、その効果や有効性を客観的に示すことが求められるようになっている。そこで本報では、各種の事業に対して投資等の優先順位を決定するような経営戦略立案のための情報を簡易に示す手法として広く活用されている、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(「PPM」:Pmduct Portfolio Management)に注目して、職業能力開発総合大学校の研修課程で2002年5〜10月に実施した65コースを対象としてその訓練評価への適用の適否を検討した。 今回の試行では、以下のようなPPMの特徴が見出された。 @単純で低コストであること Aコース間の相対的な比較は、客観的であること Bコース内容の問題と募集方法の問題との切り分けができる C定常的に実施しているアンケートの数値を容易に活用できる 他方、以下のような留意点が見出された。 @縦横軸の意味を明確にしておく必要があること APPMだけでコースの良否の全てを判断できないこと B縦横軸の評価項目および中位点の設定は、訓練を設定している目的、受講者の受講目的、在職者の場合は派遣してくる企業の目的等を考慮して設定し、それを明確に示す必要があること 以上のような点に留意した上でPPMを活用することは、施設で実施しているセミナー全体のレベル向上に貢献するだろう。 PPMは、不適切なコースを早期に発見することに、特に効果を発揮すると考えられる。 発表の後、次の意見が示された。 PPMの縦軸の設定方法の工夫が必要である。 現在は、縦軸が受講率であるが、受講者数、収益率等が考えられること。 業績や講師の評価として利用するのではなく、形成的な評価として利用することを前提とすべきで、常にそれを意識することが必要であることが示された。 テキストと示された論文「PPM手法を適用した研修効果評価手法の構築」は、こちら。 pdfファイル 874KB |
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討論 | 職業訓練の教育力の特徴 | 小原哲郎 |
職業訓練大学校に赴任することで、同じように見える教育と職業訓練にずいぶん大きな違いがあることに気づいた。職業訓練の世界の外にいる人に、あるいは、職業訓練の世界の中にいてあたりまえと考えている人に、その意味を伝えることを目的に「職業訓練の教育力の特徴」を著した。 そのキーワードは、「仕上がり像」、「手本を示す」、「生活指導」であるとした。 こうした考えを紹介された後、次のような意見が聞かれた。 ●教育が王道だと考えていたが、職業訓練こそが王道だと考えるようになった。学校の様々な問題は、職業を中心に置かないことによる問題だと考えている。 学校の学問の自由、という考え方は、他方で無責任。ただし、仕上がり像と考える場合に、単にルーチンワークができるだけでなく、将来を開くことができることまでを含めたい。 ●「仕上がり像」が示す能力主義という場合に、どのような能力主義を指すのかといえば、成果主義や顕在化された能力という立場ではなく、本来的な能力主義の立場を取りたい。 ●「仕上がり像」が示す能力は、最終的に仕事を一人前にできる能力だろうか? ・企業から求められる能力、それは時代により変わる。訓練校の一応のカリキュラムを終えた程度の能力、企業の中で、即戦力として一人前に仕事ができるレベルなど。現在は、即戦力が求められている。 ・最終的に就職できる能力と捉えられるのではないか。 。 ・本人の自覚の範囲だろう。指導員ほどではないというような感覚での。 テキストと示された論文「職業訓練の教育力の特徴」は、こちら。 pdf ファイル53KB |
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討論 | 『高等学校における「職業指導」の意義』その2 | 山崎昌甫 |
前回研究会で指摘された、新卒求職者が社会的弱者に陥るという深刻な予測をもとに、職業指導の状況ををさらに考察し、次の点を指摘した。 ・第7次職業能力開発基本計画で、キャリア形成がクローズアップされていることを指摘する。しかしそれは、すでに職業安定法、雇用対策法で職業紹介の分担を行う学校が当然行う職業指導ををことさら強調したに過ぎこと。これまでそれが機能していなかったことを指摘する。 ・これまでの学校での職業指導は、進路指導と就職指導に収斂されてしまった。 ・日本の教職課程で職業指導を担当するのは心理学出身者で、「能力とは何か」、「適性とは何か」、「知能検査」、「職業適性検査」を中心にしていた。そこには、職業の実態、経済状況と職業選択といった視点はなかった。 ・労働力過剰の状態で、自身の能力を売り込むための資格ブームが起こっているが、資格のあり方が「自由主義経済」の中で、定まっていない。再度吟味する必要がある。 こうした指摘に対して、次のような意見が提示された。 ・フリーターという言葉が1990年頃でき、その当時の大卒フリーターが、30才までには何とかしたいといっていたが、何ともならなかった。 ・早稲田の卒業生の48%が就職していない。 ・キャリアコンサルタントのような人材が、学校に入って指導する仕組みはとれるのか?教育委員会が受け入れるかを判断する。 ●・高卒労働市場が縮小していると考えられる。もともと、大卒でなければ就職できないという考えにはならないか。米国のポストセカンダリースクールのように。 ・韓国でも高卒就職は考えられない。ほとんど全員が大学に進学する。そこでの職業指導が必要。 ・反対に、高校までゆく必要のない人たちまで、高校に行っているのではないか。高校生の半数は、授業等について行けていない。中卒で良いのではないか。 ・厚生労働省が中高生ふれあい事業を推進しようとしている。嘱託職員を学校に派遣して、活動を通して、指導する。京都の私の仕事館が、その職員の研修を行う。 |
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紹介 | マクドナルドハンバーガー大学の紹介 | 新井吾朗 |
一般に、マニュアルを中心とした教育システムが構築されていると考えられているマクドナルドの教育システムの今を見学の報告の形で紹介した。 その特徴として、次のキーワードを示した。 ・コンピテンシーとアカウンタビリティー ・ID = インストラクショナルデザイン ・ブレンド ・認知心理学 ・社会構成主義 ・Boss’s Back 説明用に提示したスライドはこちら。18MBちょっと大きいです。 |