97年度大会

昨年度(1997年10月19・20日)の研究発表から

大会準備委員会

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研 究 発 表 要 旨

A−1〜3
高校職業教育課程と生徒進路の関連構造の変容に関する実証的研究―愛知県の工業高校の事例を中心にして―
○寺田 盛紀(名古屋大学)・○佐藤 史人・○吉留 久晴・松島 智洋・沈 勤(名古屋大学大学院)

我が国高校職業教育システムの特質を、工業専門職業教育課程と生徒進路の関連構造の変容の実態に即して解明することを目的とする。そのために、まず@1970年改訂以降の教育課程における専門教育と実習の位置づけ等の変遷を指導要領、県内の学校レベルの課程の変化に即して整理し、ついで収集資料、聞き取り調査によりA全国、愛知、若干の学校の生徒進路・就職動向の変化と重ね合わせ、B両者の関連構造の特質を析出する。

A−4
工業高校における教育課程改訂と工業教科内容の変化(1)−教育課程と工業基礎を中心にして−
長谷川 雅康(鹿児島大学)・三田 純義・門田 和男

今日高校教育の改革が鋭意押し進められており、工業高校は「専門高校」として充実が図られている。工業高校では平成元年改訂の高等学校学習指導要領に基ずく教育課程が昨年度完成し、実施されている。そこで、教科指導の中核をなす、工業教科の実習・工業基礎などの実施状況を把握するための調査研究を行った。全国の工業高校から105校を抽出し、郵送による調査を実施した。本発表では、教育課程と工業基礎の結果を中心に報告したい。

A−5
工業高校における教育課程改訂と工業教科内容の変化(2)―機械実習を中心として―
門田 和雄(東京工業大学工学部附属工業高等学校)・長谷川 雅康

昭和51年(1976)、昭和62年(1987)、平成8年(1996)の10年おきに3回、工業高校における実習内容を調査してきた。本研究ではモノづくりの柱となる機械科における実習の内容と履習学年、履習単位数等の変遷をまとめたので、その結果を報告したい。

A−6
工業高校における教育課程改訂と工業教科内容の変化(3)―電子科と情報技術科における実習―
三田 純義(小山工業高等専門学校)・長谷川 雅康

昭和51年(1976),昭和62年(1987),平成8年(1996)の10年おきに3回,工業高校における実習内容を調査してきた。この間に学習指導要領が2回改訂され,また,エレクトロニクス技術を主にした技術も大きく変化してきた。現在の技術の頭脳となる実践的な技術者を育てている電子科と情報技術科における実習内容の変化を,教育と技術の変化の両面から報告する。

B−1
戦前の美容師における女子職業教育の変容過程―資格試験制度の導入をめぐって― 
緑川 ゆかり(東京都立大学大学院)

本発表では、昭和5年、東京府下の美容師に資格試験制度が導入されたのを契機として、その養成方法が、徒弟修業の形態から学校教育の形態へ移行していく変容の過程を歴史的に考察することを目的としている。当時、警視庁の管轄で実施されたこの試験に対して、同業組合や学校がいかに反応し対処したのかを明らかにしながら、美容師の養成における学校化というものがどのようになされつつあったのかをさぐってみる。

B−2
高等学校工業科教員の養成歴と研修ニーズ等の実態 
君和田 容子(鳥取女子短期大学)

研究目的:教育職員免許法上「教職に関する科目」の履修に特例のある高等学校工業科教員の養成歴、採用の経緯と現在の教職生活における研修ニーズ等の実態を明らかにする。その上で、工業科教員養成のあり方を教養審答申とも関連させながら考察する。
 研究方法:全国公立工業高校397校の工業科教員各2名を対象としたアンケート調査(1997年2月実施、回収率77%)。

B−3
市場経済体制移行期における中国の企業教育―国有企業の体制改革をめぐって―
方 如偉(九州女子大学)

国有企業の民営化、合理化の嵐の中、従来の「職工教育」の体制は大きく変わった。本報告はこの国有企業の合理化改革による企業教育変革の現状を、上海市の事例を通して解明してみる。今のところ、以下の三つの事例を考えている。
1.「企業内教育関連組織機構」 2.「教育有給休暇制度」 3.「民営・民間の成人学校」 なお、詳しいデータは今夏の現地調査の結果によるもので、上記の事例報告は一部変更するかもしれない。

B−4
イギリスにおける教科:Technologyの教育内容編成 
木村 誠(静岡大学)

現在、イギリスでは、5〜16歳の子どもたちのためにTechnologyは必修教科としておかれている。1995年に刊行されたナショナルカリキュラムによると、イギリスTechnology教育は「設計・技術」と「情報技術」から構成されている。なかでも「設計・技術」は、教育内容を設計技能、製作技能、知識・理解に分け、知識・理解はさらに機構、構造、製作物とその利用、品質などから編成されている。このことを日本の技術科教育の領域編成法と比較し、検討を加える。

B−5
アメリカ合衆国における1963年職業教育法制定の教育史的意義
横尾 恒隆(岩手大学教育学部)

1963年職業教育法は、職業教育に対する連邦政府の補助金の対象に中等段階の職業教育のみならず、中等後段階のそれも含めるなど、アメリカ合衆国最初の職業教育補助法であるスミス・ヒューズ法制定(1917年)以来の職業教育観を大きく転換するものであった。本発表は、連邦政府に設けられた委員会の報告書等の分析を通して、同法制定の社会的意義を明らかにすると同時に、その教育史的意義を解明することを意図する。

B−6
フランスの高等教育における職業教育改革の現状 
夏目 達也(北海道教育大学)

フランスでは、1980年代後半以降、政府の積極的な高等教育拡大策の下で、高等教育の学生が急増し、従来は少数であった高校技術・職業教育コース出身者の増加が顕著である。それに伴い学生の学力や勉学目的が多様化しており、その対応が政府や各高等教育機関の重要な課題になっている。その対策の一つが、高等教育における職業教育の整備・拡充である。本報告では、この職業教育をめぐる改革動向の概要と若干の特徴を明らかにする。

C−1
OffJTとOJTの相互関係についての一考察 
三宅 章介(東海学園大学)

昨年度の研究大会で、私はOJTを4つに類型化し、その過程からOJTを「仕事を通して仕事を教える活動である。」と定義しておいた。このOJTが効果を上げるには、OffJTと有機的関係をもたせることが重要であるといわれており、最近ではこのOffJTとOJTをめぐっての論議が活発になっている(例えば、平成8年版『労働白書』)。本報告では、OffJTとOJTの両者の関係を検討しながら、各々の機能を論じるものである。

C−2
技能実習生から見た技能実習生制度の評価 
田口 和雄(学習院大学大学院)

本報告は、技能実習生の技能実習生制度に対する評価の違いについて報告するものである。その主たる要因は、受け入れ体制、研修指導体制が標準化されていないこと、そして研修生時代の一律平等型の処遇制度が技能実習生にまでも適用されているからである。今後の改革点としては、@受け入れ体制の改善、A教育訓練体制の充実を図る。B技能実習生に対する処遇制度の整備・改善などが考えられる。

C−3
看護教育カリキュラムの変遷と看護婦の実態
村本 淳子(東京女子医科大学看護短期大学)・森 和夫(職業能力開発大学校)

わが国の現在の看護教育制度は、昭和23年に看護基礎教育を基本として保健婦・助産婦教育が一本化されることで整えられてきた。その後、昭和42年、平成元年そして平成8年と相次いでカリキュラムの改正が行われた。このカリキュラムの変遷は、看護婦の実態から見て適合した内容になっているのだろうか。本研究は看護婦自身が必要と感じている職業能力の実態を調査し、その結果から現在の看護教育カリキュラムについて考察する。

C−4
職業能力の企業間通用性と能力開発のあり方 
泉 輝孝(奈良大学)

近年、中高年管理職層の出向・早期退職の増加や個人の自律的職業人志向傾向の強まりなど終身雇用慣行の変容が進む中で、労働者とくにホワイトカラーの職業能力の企業間通用性とそれを高める能力開発のあり方が大きな関心事となっている。そこで、最初にこの問題に関する理論的考察を行い、ついで報告者が大企業管理職の出向経験者を対象に実施したアンケート調査の結果を報告する。

C−5
人事施策の変化とホワイトカラーの不安感 
平田 謙次(産能大学)・八原 忠彦

年俸制や業績主義など新たな人事施策は、バブル崩壊後の経営再建の切り札として注目され久しいが、日本のビジネスパースンにとってどのような心理的影響をおよぼしているのかを明らかにするために、今回調査をおこなった。米国ではすでに新たな人事施策が場合によっては、不安、無気力を生み出しているとの報告もあるが、日本のホワイトカラーの場合での影響の程度や要因について報告する。

C−6
ホワイトカラーのキャリアに関する基礎的研究―電機業界における部長昇格までのキャリアパスの類型化から―
○砂田 栄光(生涯職業能力開発センター)・遊間 和子(NEC総研)

近年、ホワイトカラーの専門職が話題となっているが、そのような専門職的なキャリア形成がどのように行われているかを実証的に報告した例は少ない。そこで、電機業界における、それぞれの分野で、マネージャーとして活躍されている方たちのキャリアパスの積み方、専門能力の高め方の調査を実施し、部長昇格までのキャリアパスの類型化を試みた。

 

公開シンポジウム 「生涯学習時代の専門学校教育」

報告者 石田 敬二(日本経営者団体連盟)

『自律』と『多様』の人づくりに向けて」
1.これからの社会に求められる人材
『自律性』…自らが主体的に考え、自己責任に基づき、倫理観を伴って行動する。
『多様性』…多様な価値観を理解し、認め合うとともに、柔軟な思考力を養う。
『コミュニケーション能力』…ビジネスの基礎となる外国語やプレゼンテーション力等が重要。
『専門性』…特定分野での高度な専門性と、それを縦横に活用する能力が必要。
2.自らを磨くことの重要性
「学校歴」から、「学習歴」と「自ら考える力」の重視へ。
変化の激しい社会→社会人になってからも、常に能力の向上・リニューアルが求められる。
企業内教育の変化→個人が自己責任で自らの「教育」を選択する方向へ。
3.学びたい時に学ぶことができるしくみづくりを
企業に求められるもの→個人のキャリアアップのための柔軟な対応。
学校に求められるもの→企業人が受講しやすいシステムの構築。

報告者 小野 紘昭(富士ゼロックス総合教育研究所)

「人事・人材育成の変化とビジネス能力の形成」
 企業を取り巻く経営環境の変化は、日本型人事・人材育成のあり方の見直しをせまっている。従来の固定的な雇用や年功を基盤とした人事処遇、一律型の教育が変化への対応力を弱め、キャリア不安の源になっているといわれている。
 そこで、従来のシステムの何を強みとして残し、何を変えて行けば良いのかを、一度整理しておくことが重要であろう。最新のデータを基に現状の分析と、今後の人材育成の方向性を探りたいと思う。

報告者 柴崎 信三(日本経済新聞社編集委員)

大学院の職業人再教育と専門学校」
 社会人向け夜間大学院の広がりに加えて、大学審では「通信制大学院」や社会人対象のリフレッシュ教育にマルチメデイアの活用を打ち出し、職業人再教育における大学と専門学校との競争が激しくなりそうだ。その方向性とすみ分けを展望する。

報告者 横山 茂(財団法人専修学校教育振興会・全国専修学校各種学校総連合会)

「専修学校における職業人再教育の現状」
 平成7年度から文部省の予算により、技術革新の進展や産業構造の変化等に対応した社会人・職業人の学習ニーズに応えるため、専修学校における職業人の再教育に関する調査研究が進められている。専修学校関係者、産業界、学識経験者による「専修学校職業人再教育推進協議会」を中心に工業、農業、経理、服飾、語学観光、情報、社会福祉の各専門部会で、プログラム開発、試行的講座開設等が行われており、さらに今年度からはその延長として「産学連携推進事業」を開始した。

司 会 井戸 和男(天理大学教授・日本産業教育学会理事)

見学会場  公共訓練施設見学

キリンビール東京工場

 


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